あてもなく犬吠埼(2017年8月27日~28日)
「ほととぎす 銚子は国の とっぱずれ」とは、江戸時代の豪商、古帳庵が詠んだ句だとか。
千葉から鈍行に揺られ約2時間。その“とっぱずれ”の銚子に到着。
あてもない、気ままな旅が始まる。
銚子電鉄に乗り換え、車内で一日乗車券を購入。
銚子-外川(とかわ)間の6.4Kmを約20分で結ぶ単線は、1時間に1~2本程度しかない。
まずは、観音駅で下車し、飯沼観音・圓福寺へ。
観音駅はかわいらしい佇まい
こちらは坂東33観音霊場 第27番札所となっているので、札所めぐりをされている方にはおなじみかもしれない。
正徳元(1711)年に造立された大仏や、平成21(2009)年完成の立派な五重塔などもある。
仁王門から銚子駅方面に延びる市のメインストリート?的な通りは門前町の名残りか、商店街となっている。
すぐ近くに銚子漁港第一卸売市場もあるのだが、あいにくこの日は日曜日でお休み。
魚介の昼食処を探すべくブラブラするも、なかなかピンとくるものがなく、結局歩いて銚子駅まで戻ってきてしまった。
空腹もピークなところで、駅前に回転寿司と魚料理の店「しまたけ水産」があったので、回転寿司の方に入る。
シャリはかなり小さいが、ネタの大きさがウリのひとつらしい。
はじめて名を聞く深海魚とか、やたらと大きいメカジキなど、普段お目にかかれないものを中心に5皿10貫をいただいた。
子どもの頃、家族で日帰りで来たことがあるのだが、岬に立つ灯台の風景に何とも言えぬ不安感のようなものを覚えた記憶がある。あの感覚はなんだったのか。
(ちなみに、同じく子どもの頃、三浦半島の城ヶ島灯台に行った時も同じ感覚を覚えた。岬恐怖症なのか…)
灯台の入口にはおそろいの白いポストも
また同じ感覚が甦るのだろうか…とちょっと期待して犬吠埼灯台に向かう。
99段のらせん階段を休みなく上ると、果てしない水平線が視界に広がる。
まさに「瑠璃色の地球」だ。
子どもの頃の不安感は全くなく、むしろ、穏やかな海の姿に癒される。
時が許せばずっと眺めていたいところだった。
(このときの脳内BGMはもちろん「瑠璃色の地球」。歌いだしそうになる…)
灯台の上から眺める水平線
白亜紀の地層が残る海岸。地球は生きている
灯台見学と、白亜紀の地層が残る海辺を少し散策した後は、銚子電鉄で終点の外川へ。
なんともレトロな駅舎と、小さな港町。好きな要素しかない。
駅から坂を下ると港へ出る。
外川駅は古き良き木造駅舎
多くの釣り船が係留する外川港
釣り船の船屋がいくつかあり、お食事処になっているところもある。
こういうところで新鮮な魚料理がいただけるのだろうなぁ。昼にここまで来なかったのを少し後悔。
そんな中、地元の子どもたちや車で乗りつける人が出入りする民家があった。近づくと、軒先がかき氷屋になっている。
せっかくなので、黒蜜氷(150円)をいただく。いちごやメロンなどのシロップなら100円とチープだが、氷は純氷を使っているようだった。暑い日のオヤツにはちょうど良い。
もう少し、この港町をブラブラしたかったが、チェックイン時間も迫ってきた。
犬吠埼には温泉宿がいくつかある。
温泉宿はおひとり様プランが少ないのだが、今回はお手軽な価格で一人宿泊もOKの犬吠埼観光ホテルに決めた。
いかにも、ザ・昭和の古い温泉ホテルだが、部屋はリノベーションしているらしく、海に面した窓辺には無印良品のソファ、大画面テレビが2台、マッサージチェアもあり、一人にはもったいないくらい。
夕方、周辺の観光スポットを巡る無料のガイドバスが出るというので、参加することに。
外川の港町の築造、醤油製造も、江戸時代に紀州から渡ってきた人の手によるものだという。
その外川を通り、犬岩へ。
犬吠埼の地名の由来ともいわれるこの岩は、源義経一行が奥州へ落ち延びる際、海岸に残していった愛犬の若丸が鳴き続け、犬の形の岩になったものだという伝説がある。
次は、屏風ヶ浦へ。高さ40m~50mの海食崖が約10Kmにわたって続く姿は「東洋のドーバー」ともいわれるらしい。
ちょうど日が落ちる前。屏風を夕日が照らす。
車は「地球の丸く見える丘展望館」のある山を越え、灯台側に戻り、宿へ。
温泉で汗を流し、地元魚介を使った夕餉をいただき、さらにもう一度温泉につかり、就寝。
翌朝は日の出時刻(5時)に起きてみるも、雲が厚く水平線から昇る太陽を拝めず残念。
朝から温泉につかり、海と灯台を眺めながら朝食。
この日もとくに予定は決めておらず。
チェックアウト後、気になっていた満願寺というお寺まで送っていただき、拝観。
霊場巡りのテーマパークのようなお寺。諸国霊場を巡拝満願した方々の寄進により、それぞれのご本尊が祀られている。
ここを拝めば西国、坂東、秩父、四国の188ヶ所をお参りしたと同じご利益があるとのこと。
護摩祈願をお願いし、なにやら重たい「福袋」をいただいたのだが、中身はヤマサ醤油だった。
あれ、どこかで見たような?
帰路はレトロな車両で
犬吠駅遠景。ポルトガル宮殿風建築の駅舎は、関東の駅百選に選ばれている
拝観後は銚子に戻り、海鮮レストランや水産物即売センターを目当てに、銚子ポートタワーへ。
銚子港から利根川河口、茨城の波崎港まで見渡せる。もとはこのタワーが立っているあたりも海で、タワーの足元には夫婦ヶ鼻地層が残されている。
銚子ポートタワーと、夫婦ヶ鼻地層
タワーからの眺め。手前から銚子港、利根川河口、波崎港が見える
海鮮丼の昼食をいただき、お土産を物色。
地元産のものを売っているお店を吟味し(違うところで獲れたものを銚子で加工して売っているような店もあったので)、とろさばととろいわしの開き、銚子産の魚を使った缶詰などを購入。
これがまた、どれもとても美味しいものだった。
行きと同じく、鈍行に揺られて帰る。
行きと反対側の車窓からは、黄金色に輝く稲が一面にひろがっていた。
千葉は米どころでもあったのだなぁと実感。
あてもない旅だったが、千葉県内にはまだまだ魅力的なところがたくさんある。
近場でちょっと、ゆるりと過ごす旅もよいかもしれない。
銚子にはまた行きたい。海を眺めて、美味しい魚料理を食べたり、新鮮な魚を買ったり。
【関連リンク】
http://www.choshi-dentetsu.jp/
http://www.choshi-geopark.jp/index.html
犬吠埼観光ホテル
外川港のかき氷屋さん・市田商店